ギドクる no.1
キム・ギドクの作品は、なぜかほとんど観ている。
初期の作品で、入手できないもの以外は、知らぬ間になんだか観ていた。
そんなに意識して観たわけじゃないんだけど、結局は観てしまう監督だったりする。
よく伺っているブロガーのizumizさんのところで、ギドクが最近監督をやめる宣言をした
トピが書かれていたが、どうも彼の評価は、海外よりも韓国国内で非常に低い。
「毒の垂れ流し」だの「人を傷付けることしか考えていない」だの「気分が悪くなる」だの
かなりひどいいいようで批判されてしまうことも。
で、映画祭などにも参加できず、まぁ、どうしてこうも迫害されちゃうのか? ギドク?
と思ったりもする。その迫害がまた彼のいい意味でのエネルギーなるといいのだけど。



d0083686_17245393.jpgまぁ、このblogでギドク作品で最初に触れなくてはならないのは、"受取人不明"でしょう^^
この映画、痛すぎた。
いや、たぶん誰が観ても、救いがなく痛い作品だと思うのだが、個人的には、あのドングン演じた黒人米軍兵士との混血児のチャングクの環境が、理解できる場所で育ったせいで、より痛さを感じたのかもしれない。
中学・高校時代、私は米軍基地がある町に住んでいた。この手の町に住んでいると、チャングンのような話は、そこら中に落ちている。父親の名前がわからない子、離婚して父親が本国に帰ってしまった子。もちろん、米兵ときちんと結婚して、幸せに暮らしている人もいる。まじめな米兵もたくさんいるから、すべてが不幸というわけではないので、その点誤解がないように^^
でも、"チャングンは特殊な子"ではないのだ。
しかも、在留米軍がある国であれば、本当によく転がっている話だということ。
そのことを指摘した映画が日本ではあまり作られていないのが不思議だ。
唯一あるのは、59年に作られた"キクとイサム"という作品。
あとは、"人間の証明"がそのことが隠しテーマになっていることぐらいだ。

d0083686_17274753.jpgそして、救いようがないチャングンの人生。本当に救いがない。一筋の光明なんてものは、チャングンには存在しないのだ。
でも、これが韓国での現実なのだ。
日本でも、チャングム的な宿命を背負った子どもは、つらい現実があるが、戦後まもなくでもない今は、ミックスだからと差別されることも少なくなってきている。しかも、ミックスの人口も驚くほど増えているし。私の友達の子どもで、アフロ系のミックスの子どもたちがたくさんいるのが、みんなそんなに差別に悩んだりはしていない。


でも正直、韓国はちょっと違う。
今年の春に、NFLのヒーローのハインズ・ウォードが母親の故郷を訪ねたいと韓国に初渡韓した。そのとき、ミックスの人たちが集まって、涙を流して差別をされてきた環境について語っているニュースを観て、まだまだ大変なんだな~と思ってしまった。実際に、国際結婚も増え、ミックスの子どもたちも増えてはいるが、高校中退や失業率も非常に高く、アウトローな人生を歩むしかない、というデータもニュースに出ていた。朝鮮日報@こちら

私自身、知り合いのアフロアメリカ人が韓国在住で、その男性とソウルの街を歩いたことがあるが、そのときタクシーに乗ろうとしたら、乗車拒否をされてしまった(笑)。スーパーでも嫌な顔をされ、私が日本人だとわかると、「なんだ、日本人なのね」とほっとする顔をされたこともあった・・・^^; 彼は笑っていたが、「この国は日本の比較にならないほど、差別が厳しい」と訴えていた。

そんな現実を知って、"受取人不明"を観たので、非常に痛かった。
結局、チャングンの人生は、彼がどんなに懸命に正しく生きようと思っても、帰られない宿命を背負ってしまっているんだと、ということ。あの最後のチャングンの姿に、甘く考えられない現実を観た思いがした。努力すればネガティブな宿命は変えられると考えるのは、救いがある立場の人間の言い草だ。"受取人不明"の救いのなさは、先日観た"ホテル ルワンダ"のセリフにも似ている。部族抗争の大量殺戮がルワンダで行われているというのに、先進国の連合軍の応援部隊は一世に退去。その現実に、連合軍の大佐は歯がゆそうにこう言った。
「誰も助けにこないのは、キミたちが黒人だからだ。そして、キミたちがニガーにもなれないアフリカ人だからなんだ。これが現実なんだよ・・・・」
これもまた、不条理だが変えられない現実だ・・・。

ギドクの作品の中でも、この作品は、生々しいまでの現実と、自分たちの中に潜む差別意識やアンバランスな劣等感を想いっきり逆撫でする作品だから、「嫌い」という人が多いのかもしれない。まさに、逆ギレ状態なのかも^^;
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作品をドングンよりに書いてしまったが、登場人物すべてが、負の宿命を変えられずもがいても抜け出せない。愛犬家には目を覆いたくなる犬のシーンが出てくるが、殺戮された犬は彼らの象徴だったのかもしれない・・・。

こんなハードな内容の作品を、ノンストに出演しながら(ノンストは毎日放送なので、忙しい)、
さらに初アルバム制作とも重なってとても忙しい状態の中、撮影したというドングン。
すごい精神力だわ・・・・^^; 私だったらこんな役やったら、数年間は落ちてしまいそう・・・。
アフロアメリカンと結婚した友人のお墨付きでもありますが、ミックス役はあまり違和感なし。
しかも、話す英語の発音がよくてびっくし^^;

ギドク氏に最後のチャングンをどうしてあの姿にしたのか、質問したい。
ミックスだから半分・・・・だったのかな~?
観た方で答えが出ている方は教えてジュセヨ^^;
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by tongkun | 2006-09-16 14:53 | 映画
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